言の葉日記

ことばに関する様々な話題をわかりやすく取り上げます

日本人英語はどのように聞こえるのか

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日本人にとって英語は聞き取りにくい言葉です。

それでは日本人の英語は外国人にどのように聞こえるのでしょうか。

聞こえ方は母語の影響を受けるため一概には言えませんが、英語のネイティブであれノンネイティブであれ、少なくとも日本人の英語を聞き取り易いとは感じていないと思います。

発音が下手だから? 

いえ。

文法が正確ではないから?

いえ。

それは、子音が弱いからです。

日本人が話す英語を聞いていると「あうあう」とか「おうおう」のように母音しか聞こえてこないことがあります。歌を歌っているように聞こえることもあります。

これは子音の発音が弱すぎること、すべての音節を同じ長さで発音すること、強弱アクセントを高低アクセントに変換してしまうことが原因と思われます。

これは母語である日本語の干渉の結果なので仕方がないことです。日本人に責任があるわけではありません。

とは言え英語は子音優位の言葉なので、子音が弱いと英語でのコミュニケーションが難しくなるでしょう。

そこで、ちょっと試していただきたいことがあります。

子音に敏感になる練習です。

「練習なんか面倒くさい」という方は、ただ「こんな考え方もあるのかな」と思っていただければ結構です。

いったん英語から離れます。

「えっ…」と思わないでください。

英語の近い親戚で子音を強く発音するドイツ語を聞きます。素材は何でも構いません。スマートフォンのアプリでドイツ、オーストリア、スイスなどの放送を聞くことができるものがあるので利用してもいいでしょう。意味が分からない言葉を聞くことは苦痛だと思いますが、意味を理解するためではなく、強い子音に慣れるために行うものであることを理解してください。

ただ漠然と聞くのではなく、子音を強く意識しながらある程度まとまったドイツ語を聞きます。

次に英語を聞いてみてください。子音に意識を集中して聞くようにしてください。母音は無視しても構いません。すると、以前よりも子音がはっきりと聞こえるようになっていませんか。

子音に少し敏感になったら今度は英語の文章を読んでみましょう。

短い英語の文章を用意してください。何でも構いません。自分で作文したものでも結構です。子音を強く発音しながら音読します。具体的には子音を発音するときに意識的に息を強く出すようにしてみてください。

以上を実行したからと言ってただちに英語がペラペラになったり、聞き取りがスムーズにできるようになるわけではありませんが、続けていくと少しずつ英語の世界が違って見えてくるのではないかと思います。

クセが強く、聞きにくいと言われているインド人の英語も子音に意識を集中して聞いてみると、これまでとは印象が変わるはずです。

 

 

独特な言葉の響き

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それぞれの言葉には独特な響きがあります。

そこで各国の言語がどのように聞こえるのかをまとめてみました。

以下はあくまでも筆者の耳にはどのように聞こえるかということなので、人によっては違った印象を持つ場合もあるでしょう。

まずは東アジアから

   日本語   ソフト、優しい響き、音が弱い、リズムが平板

   韓国語   激しい、喧嘩をしているみたい

   中国語   4声があるので音楽的、リズミカル

次は欧米の言語です

・ゲルマン語(西ゲルマン)

   ドイツ語  音が強い、ハッキリ、シューシューゲーゲー

   オランダ語 こもったようなはっきりしない音、ハフハフホフホフ

   英 語   ゴツゴツ、子音がくっきり聞こえる

   米 語   滑らか、子音が飲み込まれる

ロマンス語(ラテン系)

   フランス語 甘い響き、音が弱め、意外に日本語に近い

   イタリア語 リズミカル、抑揚があり音楽的、開音節(音節が母音で終わる)が心地よい

   スペイン語 ダダダダダダ、まるで機関銃

・スラブ語

   ロシア語  音が強い、子音の連続が多く簡単には真似できない

皆さんの印象と比べていかがだったでしょうか。

近い親戚同士の言葉なのに非常に印象が異なる場合があるのは面白いですね。

国会答弁と日本人

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国会では閣僚や官僚が質問に対してのらりくらりと回答になっているのか、なっていないのかわからないような答弁を行うことがしばしばあります。

このような答弁には質問に対してストレートに回答しない、話をあえてかみ合わせない、相手の土俵には乗らないという特徴があります。

質問者から見れば人をバカにしているのかと怒りたくもなるでしょう。

なぜこのようなことがまかり通るのかというと、根底にあるのは自己保身です。責任を取りたくない、責任の所在を明らかにしたくない、言質を取られたくない。失敗を極度に恐れる公務員の悲しい習性が根底にあるのではないかと思います。

ですから答弁書の作成にあたっては念入りに、慎重かつ慎重にひとつひとつの言葉を選んでいるはずです。

でも、国会議員や役人を批判する資格は日本人にはないと思っています。

日本人には多かれ少なかれこのような特徴があるからです。

そもそも日本には建設的な議論をする土壌がありません。

日本では意見と人格が貼り付いています。意見を批判されると人格を否定された気持ちになり、感情的になってしまうのです。年齢性別を問いません。

本当は建設的に意見をぶつけ合って何かを生み出すことが大事です。相手の人格を尊重しながら意見に関しては忖度しないでぶつけ合っていく。これが理想の姿です。

私は天邪鬼な性格なので会議であえて反対意見を言ってみることがあります。本当は意見に賛成している場合にでもです。ちょっとした遊び心からの行動なのですが、周囲からは面倒くさいヤツとのレッテルを貼られてしまいます。

 

日本語はひとりぼっちなのか?

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英語にはヨーロッパからインドにかけて多くの親戚の言語がありました。

それでは日本語の親戚はどこにいるのでしょうか。

残念ながら見つかっていません。

親戚同士の言葉は言語学の世界では「同系語」と表現します。日本語の同系語として科学的に証明されている言葉は現在のところないということなのです。

これまでにいろいろな言葉が日本語の同系語の候補として研究されてきました。お隣の韓国語(朝鮮語)を初め、アジア大陸のアルタイ語ツングース語、モンゴル語トルコ語など)、太平洋の島々で話されているポリネシア語、さらには南インドタミル語など。

それぞれ日本語との間に何らかの共通する点はあるものの、いずれも同系関係を決める決定打に欠ける状況です。

インド・ヨーロッパ語族と違い、日本語の周辺言語には古い言語資料が残っていないために過去に遡って同じ時代の姿を比較できないことが同系関係を証明できない一因ともいわれています。

最近では日本語の同系語に関する新たな説も出てきていないようです。親戚探しはあきらめムードになってしまったのでしょうか。

私は次のように想像しています。

古い時代のアジア大陸の何処かに日本語の祖先の言葉が存在していました。場所は西アジアから現在の中国にかけてでしょうか。もしかすると中東かもしれません。その地は古来より多くの民族が行きかい、新たな国が出来ては滅ぶ事を繰り返してきました。そうした中で日本語の祖先を話す人々のうち、一部が東に移動し、さらに海を渡って日本に上陸しました。残った人々は他の民族に征服され、殺されて滅亡したか、征服者に同化してしまった。逃亡した人たちもいたでしょうが逃亡先で現地に溶け込んでその痕跡はわからなくなってしまったでしょう。

ところで、本土の日本語と沖縄の言葉は言語学的にかなり距離があり、本来であれば別言語と呼んでも差し支えないほどです。ただ、ともに日本国内で使われているため、現在では沖縄の言葉は日本語の方言とされているのです。

もしも、琉球王国時代のように沖縄が独立国であれば独立言語の「琉球語」として扱われていたことでしょう。

 

英語はヨーロッパ語の異端児

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英語はヨーロッパのほとんどの言語と親戚です。親戚というのは先祖を遡ると共通の言語にたどり着くという意味です。

最も近い親戚はオランダ語やドイツ語です。西ゲルマン語と呼ばれます。次に近いのは北欧のデンマーク語、スウェーデン語、ノルウェー語などの北ゲルマン語です。つまり英語はゲルマン民族の言葉が最も身近な仲間ということになります。

ラテン語から分かれたフランス語、イタリア語、スペイン語などは少し遠い親戚になります。これらはラテン民族の言葉です。さらに、地理的にかなり離れた場所にあるイランのペルシャ語やインドのヒンディー語は遠い親戚です。

このようにインドからヨーロッパまで広がっている親戚の言語のグループをインド・ヨーロッパ語族と言います。

英語は世界で初めて産業革命を成し遂げた大英帝国の言葉で、現在ではアメリカをはじめとするイギリスの旧植民地の公用語になっています。国境をまたぐビジネスや国際会議などでは共通語として使われることが多く、実質的な世界共通語になりつつあります。

このようにヨーロッパを代表する言葉である英語ですが、実はその特徴は最もヨーロッパ語的ではないのです。

ヨーロッパの言語の特徴を一言で表すと「屈折語」です。これは専門用語なので忘れていただいて構いません。

具体的に説明します。

英語は言葉の順序が決まっています。

主語が最初に来て、次は動詞、最後は目的語のように。

しかし、本来のヨーロッパの言葉では、語順は比較的自由です。

例えば名詞の場合、文中のどこにあっても語尾の形などでその言葉が主語なのか、目的語なのかという文法上での役割が分かります。英語はこの機能を失ってしまいました。

それから動詞はその形を見れば、主語がなくても誰が主語かわかります。また、現在形、過去形、未来形などの時制もわかります。そのため、動詞が文の先頭に来ても、後ろの方に来ても意味がわかります。このような特徴があるため、語順がきっちりきまっていなくても理解できるのです。

ではなぜ英語が親戚たちとは異なる特徴を持つに至ったのか。英語の歴史を簡単に振り返ってみましょう。

5世紀にドイツ北部にいたゲルマン民族のある部族がイギリスに侵入しました。その部族とはアングル人、サクソン人などです。アングロサクソンという言葉の由来にもなっています。彼らの言葉、当時の「英語」はドイツ語の方言と呼んでも差し支えないくらいドイツ語に似たものでした。

その後、イギリスは北欧のゲルマン人であるバイキングに何度も襲撃されました。一時は国土のかなりの部分を占拠されたこともありました。この影響で、英語が変化しました。文法機能を表す単語の語尾がなくなったり、ドイツ語的な言葉が北欧的な言葉に置き換えられたりしました。

1066年にはフランス北西部にいたノルマン人がイギリスを征服しました。ノルマン人はもともと北欧のバイキングでしたが、フランス国王の臣下となりフランスに住み着いているうちに、フランス人化しました。イギリスでは支配者層の言葉が英語からフランス語に置き換えられてしまいました。

時を経て英語は主役の地位を取り戻しますが、その間にフランス語が大量に取り入れられました。それから今に至るまでに文化的な言葉がフランス語、ラテン語ギリシア語から次々と借用されました。別の言語から取り入れた言葉を借用語と言いますが、現在の英語は語彙の半分以上が借用語であると言われています。

対照的に兄弟であるドイツ語は昔ながらのゲルマン語の特徴をよく保っていて、借用語も少なめです。借用する場合も元のまま直接取り入れるだけではなく、ドイツ語風に翻訳して借用することも多いそうです。

このように英語は最も身近な親戚からも大きくかけ離れた別言語になってしまいました。

最後に英語の構成要素を大まかに計算式で表してみます。

西ゲルマン語(北ドイツのドイツ語方言)+ 北ゲルマン語(北欧語) + ラテン系言語(フランス語、ラテン語)= 現代英語

 

 

母と子の絆が強い日本語

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50音図をみてください。

「あ行」は「あいうえお(a、i、u、e、o )」の母音のみで構成されています。「か行」以降は一つの子音の後ろに一つの母音が結びつく形で出来ています。

例えば「か行」は子音の「k」に母音の「a、i、u、e、o」が結びついて「かきくけこ(ka、ki、ku、ke、ko)」になります。同じパターンが「わ行」まで続きます。

日本人にとっては当たり前すぎて何とも思わないでしょう。でもよく考えると面白いことです。

日本語の音は「母音」だけの場合と「子音+母音」の2つのパターンで成り立っています。その他のパターンは原則としてありません。日本人は「子音+母音」を音の単位として認識しているということです。

本来、子音と母音は別の音なのですが、日本語では分けることができません。か行の「か(ka)」は音声的には「k」と「a」に分けられるのですが、かな表記では「か」をさらに分けることは不可能です。つまり、「か」が日本人が音として認識できる最小の単位なのです。

また、日本語では一部の例外を除いて、子音だけでは音として成り立ちません。必ず母音が必要です。子供(子音)には必ず母親(母音)の付き添いが必要なのです。日本語では母と子の絆が非常に強く、誰にも切り離すことは出来ません。

英語の場合はまったく違います。

This is a penという文には4つの単語があります。音の組み合わせはThis「子音+母音+子音」、is「母音+子音」、a「母音」、pen「子音+母音+子音」と様々です。

streetという単語は日本人なら誰でも知っていると思ますが、「子音+子音+子音+母音+子音」の組み合わせで出来ています。子音が3つも続くなんて日本語の世界では想像もできませんね。

英語は子音が多い言葉です。日本語と違い子どもが親離れできているということでしょうか。それとも親が子離れできているということでしょうか。

 

 

 

 

 

日本語の母音は「あいうえお」だけ?

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日本語の母音は5つです。50音図を見ても「あいうえお」の5つしかありません。これは常識と言っても良いでしょう。

でもあえてここでひねくれた指摘をします。

日本語の母音が5つという常識はイエスでもありノーでもある…と。

どういうことなのでしょうか。

例えば「あ」という音を取り上げます。「あ」は口の開け方、舌の位置、などによって実際には微妙にいくつかの異なった音になります。仮にそれを「a1」「a2」「a3」の3つのパターンがあるとしましょう。

「a1」も「a2」」も「a3」も厳密には異なる音ですが、日本人はすべて同じ音として認識します。ですから「あ」の音は一つしかありません。同じことが「いうえお」にも当てはまります。

言語によっては「a1」「a2」「a3」をそれぞれ別の音として認識するものがあります。音が違うということは意味の使い分けがあるということになります。ひょっとした日本語の方言の中にもそのような例があるかもしれません。

まとめると、日本人が脳で認識する母音は「あいうえお」の5つだけれども、実際に発音している母音の数は5つよりも多いということです。

この特徴を逆から言うと、日本人の脳はどのような音でも母音であれば「あいうえお」のいずれかの音として強引に解釈してしまうということになります。

ですから日本人が母音の多い外国語(例えば8母音だったり、10母音だったり)に接すると、話す時にも、聞く時にも苦労するわけです。(本当は子音についても触れなければならないのですが、話を単純にするためにここではスルーします)

でも…

私は5母音の日本語が好きです。美しいことばだと思っています。身びいきかもしれませんが。