言の葉日記

ことばに関する様々な話題をわかりやすく取り上げます

日本語の母音は「あいうえお」だけ?

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日本語の母音は5つです。50音図を見ても「あいうえお」の5つしかありません。これは常識と言っても良いでしょう。

でもあえてここでひねくれた指摘をします。

日本語の母音が5つという常識はイエスでもありノーでもある…と。

どういうことなのでしょうか。

例えば「あ」という音を取り上げます。「あ」は口の開け方、舌の位置、などによって実際には微妙にいくつかの異なった音になります。仮にそれを「a1」「a2」「a3」の3つのパターンがあるとしましょう。

「a1」も「a2」」も「a3」も厳密には異なる音ですが、日本人はすべて同じ音として認識します。ですから「あ」の音は一つしかありません。同じことが「いうえお」にも当てはまります。

言語によっては「a1」「a2」「a3」をそれぞれ別の音として認識するものがあります。音が違うということは意味の使い分けがあるということになります。ひょっとした日本語の方言の中にもそのような例があるかもしれません。

まとめると、日本人が脳で認識する母音は「あいうえお」の5つだけれども、実際に発音している母音の数は5つよりも多いということです。

この特徴を逆から言うと、日本人の脳はどのような音でも母音であれば「あいうえお」のいずれかの音として強引に解釈してしまうということになります。

ですから日本人が母音の多い外国語(例えば8母音だったり、10母音だったり)に接すると、話す時にも、聞く時にも苦労するわけです。(本当は子音についても触れなければならないのですが、話を単純にするためにここではスルーします)

でも…

私は5母音の日本語が好きです。美しいことばだと思っています。身びいきかもしれませんが。